夜のしめやかな願い

宗臣が鼻先で笑ったのが聞こえた。

「全く・・・だな」

ちらりとさゆりを見下ろしながら何か言った。

問うように見上げた時には、浴室へと消えていく背中だった。

走っている赤い傷は自分がつけたものだろう。

おたおたと視線を伏せ、痛むのをかばいながら、そろそろと上体を起こして、下敷きになっている着物で身を覆おうとした。

せっかくの着物が乳白色と赤色で汚れている。

えっ?

初めてでも、つたない知識はある。

呆然として、呼吸が早くなる。

浴室のドアがバタリと閉まる音に、さゆりは身を震わせた。

宗臣が裸体のまま、ためらいもなく散乱している衣類を身に着けていく。

「安全日か?」

さゆりは目を大きくしたまま見上げた。
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