夜のしめやかな願い
6.
*
左に置いてある教科書を見ては、右に置いてあるノートに書きつける。
さゆりは、目の前に座っている宗忠をただ見つめていた。
電話をしたら、カフェで受験勉強をしているのというのに、のぞきにきた。
わざわざ一人暮らしをしているのに、なぜ家でしないのかと思ったら、押しかけてきて居座っている女性がいるらしい。
それって何番目の彼女なのか。
“彼女”ですらないかもしれないけど。
ここに座っていれば、女よけぐらいになるだろう。
「ああ、吐きそう」
宗忠はため息交じりに呟いて、片手で口を覆う。
少し伏せられたまぶた。
影を落とすまつげ。
色っぽいなあ。