夜のしめやかな願い
数えてみると、あれからもう一年経ったのだ。
「どうだろう」
思わぬ言葉に、さゆりは宗忠の顔を見た。
「あの時。
会いに行った時。
たーくんと同じ笑い方していた」
「そりゃ、兄弟だし。
それに僕と兄は母親似だし」
宗忠はやわらかく微笑した。
なぜか泣きたくなった、さゆりは奥歯をかみしめる。
「私、似合わないと思った。
オミに優しい笑いは似合わないって」
「うーん」
宗忠は困ったようにまなじりを下げる。
「たーくんのそういう優男っぽい演技、オミもするのかってショックだった」
「演技ってね」
苦笑いをして宗忠は微妙に視線を外した。