夜のしめやかな願い

数えてみると、あれからもう一年経ったのだ。

「どうだろう」

思わぬ言葉に、さゆりは宗忠の顔を見た。

「あの時。
 会いに行った時。
 たーくんと同じ笑い方していた」
「そりゃ、兄弟だし。
 それに僕と兄は母親似だし」

宗忠はやわらかく微笑した。

なぜか泣きたくなった、さゆりは奥歯をかみしめる。

「私、似合わないと思った。
 オミに優しい笑いは似合わないって」
「うーん」

宗忠は困ったようにまなじりを下げる。

「たーくんのそういう優男っぽい演技、オミもするのかってショックだった」
「演技ってね」

苦笑いをして宗忠は微妙に視線を外した。

< 99 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop