時計の針は僕と君。
それから1ヶ月もしないうちにまた私は聡美とライブハウスへ向かった。ゼブライズのライブは惹き込まれてしまいその場から動くことが出来ない。また、タツミと目が合った。ス、キ。そう口を動かしてみた。するとタツミはにこりと笑いかけてくれる。今日は目的があってきたのだ。ライブ後の物販にいこうと始めたばかりのバイト代を五千円、持ってきた。前回は行けなかった物販、そこではメンバーと話すことができる。きっとタツミは私に優しく「この間はありがとう」と話してくれるだろう。ツーショットチェキ、私の番が近づくにつれ心臓が張り裂けそうになる。そしてついに遠くにいたタツミが目の前にたっていた。
「あの、タツミさん私ライブ二回目で」
「そうなの?ありがとう〜」
タツミは優しく微笑むが目が合った事など覚えていない様子だった。私は期待しすぎていたのだ、こんなに多くの人がいるのに私なんか覚えているわけがない。そう落ち込んでいた時だった、チェキカメラをもっていたギター兼ボーカルのミズキが近寄ってくる。
「1ヶ月前のライブも来てたよね。ちゃんと覚えているよ君はタツミをみてたけどね、僕は君をみてたから」嬉しそうに少し笑いながら他の子には聞こえない声量で私にそう伝えた。私はその場で呆然と立ちつくした。まったく目を向けていなかったミズキにそう言われたのも私が誰を見ていたのかも当てられてしまったから。恥ずかしかった。
そうしていると、ミズキに名前を聞かれる。「あ、絢香です」声を絞り出してそう伝えた。
「覚えておくね、それじゃあ絢香ちゃんタツミの横に並んで」
タツミが優しく後ろから抱きしめてくれたけれど私はミズキの笑った顔が頭から離れなかった。
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