禁断のお茶会
「エリーゼがいなくなるのは寂しいわ……」

ルナがケーキを食べながら言う。

「そうね……」

エリーゼは、カップに入った紅茶を飲むことなく見つめる。琥珀色の液体に、自分の虚ろな目が映った。



結婚が二週間に迫ったこの日、エリーゼの家の仕立て屋は大忙しだった。

次から次へとお客がやって来て、エリーゼと両親は休むことなく手を動かし続けた。

「店の方は私たちに任せて、あなたは買い物に行って来てちょうだい。今日の夕食の買い物はまだなの」

母がエリーゼに声をかける。エリーゼはドレスの縫い直しの手を止め、母を微笑みながら見つめる。

「わかったわ」

同じように母と父も微笑む。その表情を見て、エリーゼは思う。やはり、私に人は恨めないと…。

あの漆黒の手紙は、きっと魔女が与えてくれた奇跡なんだとエリーゼはベルたちの顔を思い浮かべた。

泣き虫で臆病だが、友達思いの優しいベル。

男のように勇ましくて頼りがいのあるシャーロット。
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