愛の、愛の、愛の嵐
アタシは運ちゃんに噛みつく。


「おいこらちょっとこれどーゆーことよ
 全然進んでないじゃない!」


「・・・」


あらやだ、

なんスかこの運ちゃん。

口ぽっかり開けて固まってんですけど。


「もしもし?」


アタシは運ちゃんの目の前で手をハタハタ。

運ちゃん目をしぱつかせてようやく我にかえる。

それでもまだ口は開いたままだ。


「ね、運転手さん。アタシ急いでんの。
 口開いててもいいから運転して、
 ね、ハイヨー!」


そこでようやく運ちゃんも口を開く。


「あ、あんた、なんちゅう乗り方を・・・」


おお、ソーリー。


「たしかにそうねごめんなさい。
 シート汚しちゃったかも。
 でもアタシホントに急いでんの」


「いや、シートとかはどうでもいんだけど。
 あんた、女の子がそんな、はしたない」


ん?

言われてアタシは運ちゃんの視線を追う。

ありゃ。

勢いまかせで飛び込んだままになってたから、

アタシのスカートはぱっくりめくれ上がり

あんまりスタイリッシュでないパンティー丸出しじゃん。

オマケにドアも開いたままだから

車の外では

チラ見するオヤジやニキビ面の童貞ヤロウどもや

ンマーとかアッラーとか言ってるおばさん達で

ちょっとした人だかりになってる。


 ウップス。


はしたない。アタシとしたことが。

アタシは起き上がって着衣の乱れを正すと

仕切り直しに咳払いをひとつ、

あらためて運転手さんに号令を掛ける。



「それでは気を取り直して、出発シンコー!」

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