愛の、愛の、愛の嵐
テンパッてるアタシはたやすくブチ切れちゃう。


「アタシの、
 運命の人を追いかけてるの!」


「は?」


「ついさっき駅のホームでチラッと、
 時間に直して4、5秒ほど見かけただけの、
 名前も知らない人に一目ぼれしたから
 その彼を追いかけて
 今タクシーで先回りしようとしてんの!」


ルームミラー越しの彼の目は面白いように点点。


「・・・そんだけ?」


「そっ」


「ひとめぼれって・・・
 ちらっと見ただけなんだろ?」


「そう言ったでしょ」


「そんだけで・・・」


おじさんの頬がヒクヒクと引きつった。

笑ってる。馬鹿にしてるんだ。

アタシはノドが裂けそうなくらいの大声を

その顔にたたきつけてやった。


「そうよそう。おかしいでしょ。
 キモイでしょ。
 ストーカー一歩手前どころか
 大目に見ても半歩前って感じでしょ。
 はいはい、自分でもわかってます。
 馬鹿だと自覚してわかってやってんの!」


あれ、なんだか興奮しちゃった。

自分でもワケわかんない怒りが込み上げてくる。

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