愛の、愛の、愛の嵐
そこでまたいったん間を置き、

ウンとひとつうなずく。


「だけどよく考えたら、本当に俺は

 娘と会話してたんだろうか。

 確かに毎日話し掛けはしてたが、

 心のどこかでどうせ話ても通じないだろう、

 そう思ってはいなかったか。

 本当に、心の底から腹を割って

 娘に話し掛けると言うことをせず、

 勝手にあきらめてたんじゃあないか。

 うん。娘はそれを敏感に感じてたのかもしれない・・・

 アンタのあの泣きながら話す姿見てな、

 そう考えたんだよ。

 だからホントにお礼言わなけりゃいけないのは

 こっちのほうかもな。ありがとよ」



言われてアタシは照れてしまう。

なんでそんな事言うのよ運ちゃん。

また泣いちゃいそうになるじゃない。


「さっ、もう行かな。
 急がないと、そろそろ電車も着くぞ」


言われてはっと目が覚める。

そうだ、

アタシにはぐずぐずしているヒマは無い。


「うん、わかった、行ってくる。
 ホント、アリガトね」


そう言うと運ちゃんは

2本の指を立てておでこの前でピッと振ると、


「オウよ。アンタの彼に会えるといいな」


それだけ言ってバタン、

ドアを閉めるとタクシーは遠ざかっていった。



 オッサン、シブイぜ。

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