愛の、愛の、愛の嵐
「あのあのアタシ急いでるんだけどもう電車が来てて遅れるんだけど切符買う時間が無いの行っていい!?」


血走った目でアワ吹きながら話すアタシの

あまりの剣幕に恐れをなしたのか

駅員がややのけぞりながらうなずく。


「どもっ」


言うが早いかふたたびダッシュ! 

もうすでにかなりの人が電車を降りている。

あああ。

アタシはじりじりして心臓が破裂しそう。

足も千切れよと全力疾走で

先ほど彼の姿が消えた車両、

後ろから2両目の後ろ側の扉を目指す。

見えた。

けど。

そこはもう黒山の人だかり。

背の低いアタシは

ぴんこぴんこ跳ねながら

必死で彼の姿を追うけど、

どうにも人の数が多すぎ!

チェックしきらないうちから

人の波はどんどん改札へと流れていく。

彼の姿は見つからない。

パニックのあまり泣きそうになる。

ついには

電車からすべての人が降りてしまっても、

どこにも彼を見つけることができない。

アタシは途方にくれて頭をかきむしる。

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