愛の、愛の、愛の嵐
ああっもう! 

この駅は入口と出口の改札が違うので、

アタシは改めてその駅員に

先ほどのいきさつと、

それから忘れ物したからもう一度

外に出たい旨を早口で説明するけど、

焦るこっちの気持ちを無視して

その年配の駅員は

ほんとかねうだら確認をうだらとラチがあかず、

そうこうしてる間に

彼の姿はどんどん小さくなっていく。


「ああ、もうっ、もってけドロボー!」


そう叫ぶとアタシは

財布から取り出した千円札をその駅員に投げつけ、

そのまま改札を走り抜ける。

後ろからなにやら

呼びかける声が聞こえたけどかまっとれるかっ。

アタシはずいぶんと小さくなってしまった彼の背中を目指し、

万感の思いを胸に走る、

走る、

走る。

彼の背中が近づく、

近づく、

近づく。

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