愛の、愛の、愛の嵐
彼が顔を上げた。

その先にバスが止まっていた。

それに乗り込むつもりなのだろう、

彼の足が速まる。

いけない。

あわてて彼へと一歩を踏み出そうとしたアタシの腕を、

だれかがぐいっとひっぱった。

不意をつかれてアタシはのけぞる。



「ちょー待てよ、呼んでんだろ」



IQの低そうな無神経な声がしたが、

それどころじゃない。

今にも彼はどんどんと遠ざかっていく。



「ちょちょちょっと放してよ」



もがくけどアタシの腕は

力強くがっちりとキープされて

振りほどけない。

そんなアタシの目の前で

彼はバスに乗り込み、

無常にもそのまま発車していった。



そんな・・・あと少しだったのに・・・


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