愛の、愛の、愛の嵐
アタシはエレベーターを降りると

そのままずいずい進んで

出川の自動ドアも通り抜け、

受付らしきカウンターの奥で

こちらに気づいてアラ? 

という表情になった綺麗な女の人の前に立つ。

この時点で頭の中のシナリオは白紙。

あえて自分を追い込めば、

アタシの中の未知の引出しがかっぱり開いて

ヴィヴィッドなアドリブが飛び出すのよ。

・・・多分。

カウンターの女性は

いきなり現れた汗だくで引きつった顔をした

不審な女子高生に、

それでも笑顔を保ったまま


「どのようなごようけんでしょうか?」


とやさしく話し掛けてきてくれた。

早くなんか言わないと

誤解生んだら彼にも迷惑かけちゃう。

と、

キレーな人だなーそれにやさしそうだし

こんな大人になりたいな。

と、

まさかこの女あの方とどういうご関係

同じ職場でやぶさかでないわキーッ。

が同時に頭の中でもつれて

ワケわかんなくなったアタシは

とにかく未知なる引出しに全ての望みを託して

口を開いた。



「あっ、あの・・・
 生き別れた兄を探してるんですけどっ!」


「・・・は?」


失敗。
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