恋のキューピッドは怪獣でした!
「毎日、めそめそ泣いてばかりいた俺に、ある日、おじい様がレギラをくれたんだ。
親は亡くなったけど、おまえにはレギラが付いてる。
この世の誰よりも強いレギラが、お前をいつも見守っていてくれるんだって言ってな…」

「そ、そうなんですね。」

「その時の俺はまだレギラを良く知らなかった。
そしたら、おじい様が俺をレギラの映画に連れて行ってくれたんだ。
映画を見て、俺は圧倒された。
強いレギラにめちゃめちゃ惹かれた。
それから、俺は泣かなくなった。
俺にはレギラが付いてるんだって思ったら、涙が出なくなったんだ。
……なんか、すごく単純な子供だよな。」

「そんなこと……」

なんだかわからないけど、胸が苦しくなった。
詳しいことはわからないけど、幼い子供が両親を失うってどれほど心細いことだろう。
その当時の史郎さんの心情を思ったら、涙がぽろぽろこぼれた。



「なんで、泣くんだよ。」

史郎さんが苦笑いを浮かべる。



「ご、ごめんなさい。
こ、更年期で涙もろくなってて…」

恥ずかしいから、なんでも更年期のせいにする。
私にとって『更年期』は免罪符みたいなもんだね。



「全く、もうっ…」

史郎さんが、腕を伸ばし、私の涙を指で拭ってくれた。
突然の思いがけない行動に、思わず心臓が跳ねる。
どうすれば良いんだろう?
なんと言えば良い?
私は何も出来ずに、固まったままだった。
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