恋のキューピッドは怪獣でした！
「……どうしたんだよ！？
血が怖いのか？」

私はまた知らないうちに泣いていた。
それに気付いた史郎さんは、えらく慌てて…



「ち、違うんです。
ちょっと、大切なことを思い出して…」

「大切な…こと？」

「……はい。

私は、お義父さんと一緒に映画を見に行った時のことを話した。
本当はこんな個人的な話、するべきじゃないのかもしれないけど…
この時の私は、理性を失ってたんだと思う。



「……そうか。
良かったな、思い出せて。
現実を受け入れることが出来て…」



そう…なのかな？
これは良かったことなのかな？



まだ現実を受け入れられたわけじゃない。
気持ちはゆらゆら揺れ動いてるよ。
なんだか胸が苦しいよ。



「……焦ることはないさ。」



（……え？）



史郎さんの視線は、モニターを見たまま。
だけど、私の手をそっと包み込んでくれた。
……温かい。
なんだか、すべてを委ねられるような安心感に、私の涙は激しさを増す。



（あぁ……）



そうだ、また思い出したよ。
お義父さんはあの時、今の史郎さんみたいに私の手を握ってくれたんだ。



でも、私はその手を乱暴に振りほどいた。



なんて頑なな子供だったんだろう…
私はずっとお義父さんを傷付けて来たんだよね。



「きっといつか、わだかまりは解けると思う。
俺は君が羨ましいよ。
俺はもう謝ることも、許してもらうことも出来ないから…」

そう言った史郎さんの声は、いつもとは違ってとても頼りないものだった。
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