恋のキューピッドは怪獣でした!
「あ、あの…こちらに三浦し…」

「あ!こっちだ!」

史郎さんのことを訊ねようとしていたら、少し離れていた場所から、史郎さんが手を振ってくれた。
私はそこに駆け寄った。
史郎さんは、出掛ける時とは違う服装をしていた。
周りには数人、同じ服装をした人がいる。



「これですよね?」

私はファイルを差し出した。



「そう、これ。
ありがとう。助かったよ。」

「あの…史郎さん、ここは?」

「ここ?俺の職場。」

「え?」



あたりにいるのは、老人ばかりだ。
それも、車椅子の人が多い。
え?ここって…



「じゃあ、すまないけど、忙しいからこれで…
本当にありがとう、助かったよ。
気を付けて帰ってくれよな。」

「あ、は、はい。」



私は外に出て、今一度振り返った。
看板には『ローズガーデン』と書かれてるけど…



ここって、もしかして、老人ホームみたいなところ?
それに、史郎さんはさっき言ったよね。
「ここは俺の職場だ。」って



(えーーーーっ!?)



な、なんですと!?
だったら、史郎さんは毎日遊びに出掛けてたんじゃなくて、仕事に行ってたの?
それも、どう考えても介護的な職種だよね?



(えーーーーっ!)



びっくりだ。
史郎さんが働いてたなんて。
そっか、だから、土日でもたまに出て行ってたんだ。



あ……だったら、泊まりの日は、もしかして夜勤ってこと??
そう考えれば、すべて説明が付く。
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