恋のキューピッドは怪獣でした!




「じゃあ、適当に休んでくれ。
俺は、朝7時過ぎには出て行くから…あ、鍵、渡しとかないとな。」

「は、はい。」

鍵を受け取った私は、あてがわれた部屋に向かった。



座った途端に、なんだか小さな溜め息がこぼれた。
今日は本当にいろんなことがあった一日だった。
今、私は、名前くらいしか知らない人の家にいる。
しかも、泊まる。
史郎さんがどんな人なのかもわからないのに、もしかしたらこの状況はすごく危険なのかもしれない。
なのに、不思議と安心感がある。



(なんでかな?)



あぁ、そうだ…
危険なのは、お互い様だからかもしれない。
私がどんな人間なのかも知らないのに、史郎さんは私にこの家の鍵を預けてくれた。
私がすごい悪人だったら、どんな被害があるかもわからないよ。
たとえば、この家にある金目のものを盗んで逃げるとか。
そんなリスクがあるのに、鍵を預けてくれたっていうのは、私を信じてくれたってことなのかな?
それって、買い被り?



なんだかくすぐったいような気持ちだ。
やっぱり、人に信頼してもらえるって、気分が良い。
私もその信頼に応えようって気持ちになって来る。



(うん、頑張る!)



短い間だけど、精いっぱい頑張るよ!
本気で働く!
心の底から、そんな気持ちになれた。
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