恋のキューピッドは怪獣でした!




「もうっ、私はモンシェリのケーキが食べたかったのに…」

手島さんはぶつくさと文句を言いながら、ケーキを口に運ぶ。



早い方が良いだろうと思って、私はスーパーではなくコンビニに行ってショートケーキを買って帰ったのだけど、手島さんはスーパーの地下にあるケーキ屋さんのケーキが食べたかったらしい。
それならそうと、最初からはっきり言えっつーの!
しかも、コーヒーが冷めたからまた入れなおせとか言うし…
なんて厚かましい人なんだ。



「私がいた頃は、もっとなんでもちゃんとしてたわ。
このコーヒーだって、インスタントでしょ?
私はちゃんとコーヒーメーカーで作ってたのよ。
ほら、そこにコーヒーメーカーがあるでしょ?」

だって、史郎さんは特にそんなこと、何も言わなかったし。



「あんた、一体、どこの紹介所から来たの?」

紹介所って?
あ、家政婦紹介所のことか…



「私は、ある事情で、史郎さんに頼まれて家事をやってるだけです。」

「史郎さん?」

「え?はい、史郎さんですけど…」

「あんた、ご主人のことを『史郎さん』なんて呼んでるの?」

「え……はぁ、まぁ……」

何、なに?
『史郎さん』って呼んじゃだめなの?
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