俺のまさかの溺愛狂想曲

ドタドタと走って来た、光寿郎に
捕まり、ぶすったくれて
渋々手を引かれついて行く。

「お前、腹へると話にならないから
 飯食おう。」

黒塗りの高級車に、押し込まれ
しっかりと手をにぎられて
離そうとしてもガッチリとした指が
閉まる。


連れて行かれたのは高級な料亭

「食べないから。いらないから。」
 そう言っても中に入れられた。

愛想のいい年配の女将さんが

「まあまあどうぞ、どうぞ
 お待ちしていましたの♡」
と言われたらついニコッとしてしまう。

ピカピカの廊下を通り過ぎ
部屋の中からは落ち着いた
日本庭園が見える。

23の娘が来れるような店じゃない。


目の前には豪華な料亭プレミアの
料理が並ぶ。

いい香りが 鼻孔をくすぐる。

「あのぉ、女将さん。私は食べない
ので彼の分だけでいいですから。」

光寿郎は
「嘘つけ、腹へってんだろ!!
意地張ってないで食うぞ!!」
と箸をとる。


「私といると、恥ずかしいんでしよ。
 知らなかったよ。
なにをどうしたいの?
  
一緒にいるのは何でよ。
  夏華とHしたかったんでしょ。
  夏華、よぼうか? 私は帰るから、
  夏華ならすぐ来るから。」

席を立ったら光寿郎に、ガッチリ
抱きしめられて、
「恥ずかしかったのは最初だけ。
 と言うより、驚いただけだ。
 
だけど嫌じゃない。
結菜がうまそうに食べると、
たべさせがいがあるし、
俺も仕事頑張ろうと思える。

聞いてたろう。
仕事が山積みだから社に戻ると
言った。
お前の友達だから、やんわりと
断ったんだ。
彼女とヤルわけ無いよ、信じて。」

「抜けてる。」


 「ぬけてる?って?」
       

「残念、また今度な。そう言った。」


「あれは社交辞令だろ。」

光寿郎は慌てて叫んだ。
中居さんが、何人か様子を見に
来ていた。
 

  「社交辞令でも、夏華にとっては
   チャンスよ。また狙って来る。
   もう悲しむのは嫌。

   光寿郎が夏華の色気に勝つわけ
   無いよ。

  ‥もういい?
  おなかすいたから帰りたいの‥
  もう、・・・来ないで。」
     


「違うって、確かに前の俺なら
分からない。
 けど、今は結菜だけだから。
 信じて欲しい。」

       「む、り、!! 」
         

そう言って結菜は出て行った。
パパしか信用しない。

夏華も夏華よ。
雄吾はどうしたのよ。

結菜はその日から外食をやめた。
飯食亭だけは、大ぐらいの人が
沢山来るから此処は維持したかった。

少しトラウマかもしれない。
食べていると、ジロジロ見られて
る気がして食べれなくなる。

飯食亭のおばちゃんも
「あんたぁ、具合でも悪いのかい?
 食いすぎでどうかあるんじゃない
かい?
 病院いきなよ。な!!」

あれから食べ物を食べようとしても
なかなか喉を通らない。

自分で、たった一度の人生何だから
食べないと、と励ますが無理がある。

そんな時、椿さんが
美味しいウナギが有るから食べに
おいでとメールがあった。
断るにも椿さんだから断れなくて、
お邪魔した。

玄関先でウナギを焼いているようで
なんとも言えない香りが

クンクン、クンクンと犬の鼻のように
匂いにちがずいていく。

「おっ来たね、待ってたよ。」

椿さんは明るく出迎えてくれた。

スイセンの花が所々に、集団で
黄色いかわいらしい花の色々な
種類が咲いている。
もう直ぐ桜が咲くんだろうな。
結菜はまだ堅い蕾の木の枝を見る。

回りの桃の木のピンク色や、
赤い色が今にも芽を吹きそうだ。

風も、軟らかく吹き、まさに
春本番に近ずいている。


「結菜!! 少しやせた?」
椿さんは顔をしかめ心配そうに
覗いてくる。

 「そうですか?やせたかな?」

「だめだよ。若い娘が食べないと
心配するし‥
なんかあったの?話してごらん。」

椿さんは緩く髪をゆいあげ、
辛子色の着物にグレーの帯を
しめている。

今日は家のお婆ちゃん雰囲気だ。
椿さんが本当に心配してくれて
るのは良く分かった。

だけど光寿郎の祖母だ。
話せ無いよ。付き合って一週間で
破局したことも、付き合ってたこと
すら知らない。
   「おー、来た来た。」

 眠そうな顔をした光寿郎が 
白いニットと
 ボサボサ、頭のジャージ姿で
表れた。

結菜と目が合ったがお互い
知らないふりをした。

椿さんにも、雰囲気で何か分かる
事もあったのか何もいわずに、
庭に設けられた
テーブルに案内された。

結菜は半分しか食べられずに
すみませんと謝った。

光寿郎がチラチラみていたが、
箸をドンと置いて、

「まだ拗ねてんのか!! 
いい加減にしろ!!
 ウナギ好きだったろう。
 食べれるだろ。軽くそれくらい。」

そう言った時バーちゃんから
一発飛んできた。

ペチッ、 ィテ

「光寿郎~結菜みてごらんよ、
こんなに痩せてるのが・・・
分からないのかい!

お前が、ジジイに似て、鈍感だから
結菜は痩せてしまうんだよ。
本当に、教えなくてもジジイ
そっくりなんだから。」

ハッとして、光寿郎は、結菜を見た。

鎖骨が出て前は痩せていても、
ハツラツとしていた。
それに目がくぼんで見える。
今は、病気的な痩せ方だ。

今更ながら光寿郎は、結菜に近寄って
「病気なのか?
どこが悪いんだ。大丈夫なのか?
ん•ん•  どこ、 どこ ?」


今更ながらオロオロと結菜の
体をなぜ回しどこが悪いのか
頭の上からつま先までアワアワ
しながらアッチ向き、コッチ向きさ
せながら探している。


最後に、ひざまずき結菜の身体を
バタバタしながら触り、痩せた体を
確認すると結菜に詰め寄った。

慌てふためいた光寿郎は、
結菜をひっかかえて すぐ近くの
客間の布団を敷いて寝かした。

キャー

  「じっと寝てろ。動くな!!」

と何回も繰り返し
友人の内科医をウナギで釣り上げて
九条家に呼んだ。




「ああ、ストレスだな。
光寿郎思いあたる事は、有るな。」

「あ・・・ああある。」

「早く取り除かないと、かなり
重症になるぞ、
拒食症にもなりかねない。」

光寿郎は青くなり
跪いて内科医の瀬戸に頼んだ。


「頼む!助けてくれ。
俺の大事な女なんだ。
大事な大事な女なん 
だ頼む!! 」

涙声で叫んだ。

結菜はビックリして、
「だっ、大丈夫だってば!
食べれるし
 泣かないでよ、死ぬ訳無いじゃ
ない。」


「呆れた瀬戸は、歯医者の祐輔の
話通りだな
 この話も追加だな。」
と笑いだした。


「じゃあ光寿郎、彼女の心配が
無くなるようにしてやれ、
お前なら簡単だろ。そしたら
 またモリモリ食べるようになれ
っぞ。」



光寿郎が弁護士をすぐ呼んで医者の
診断書を取り夏華の接近禁止を証書
にした。
前の婚約者との事でも慰謝料
8百万の支払い。


出来なければ裁判に持ち込む事
会社にも注意を促すこと。

示談に応じない場合は裁判もやむを
得ない、慰謝料は少なくなるが
社会的には裁判記録が残る事

さらに現在の婚約者、九条光寿郎と
いかがわしい事を
実行したときは慰謝料が倍以上増える
おかわりが、来ることをシッカリ
書き留めてA4サイズの封筒、
に入れた内容証明を送った。


すべて弁護士に任せて本人との
接触禁止。

光寿郎は、結菜の頭や髪や、
痩せた頬を撫で撫でして、
ずっと謝った。

「こんなになるまで、苦しめて
ゴメン。
 腹一杯食べる結菜が大好きだ。

今からも、失いたくない。
ずっと愛していくから、喧嘩
しても手ははなさないでいて。」
と切実に訴えた。

夏華も、これで接触してきたら
とことんやる。

いいな!!
彼女に制裁する事も愛情だ、このまま
同じ事をやり続ける事は、
彼女も何らかの傷を受ける!

女は甘く見ると命さえ落としかねない!
教えてあげるのは結菜しか
いないだろう。彼女の為だよ。
少しは鬼になるのも必要!


結菜も必死に、心配してくれる
光寿郎は、信じれるかもしれない。
そう思って、うんと頷いた。

一週間経ち、メイから連絡があった。
夏華は不満タラタラらしい。
しかし結菜は光寿郎から言われた通り
夏華の為だとメイに、言った。

内容証明は納得出来ないらしいが

何人も目撃者がいるし、雄悟も協力
してくれる。
夏華に、勝ち目は無い事をメイも
話したらしい。

しぶしぶ、示談に、応じると弁護士に
連絡が入ったと光寿郎から報告があり
慰謝料の振り込みを一週間後に
確認したが正直お金は問題じゃない。

夏華が結婚して、子供でも出来たら
返すつもりでいる。







       













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