あなたを忘れていいですか?
東京の生活は、目まぐるしいほど早く過ぎていった。
新しい部屋、新しい職場にあっという間に慣れた。
総合病院の内科病棟に勤務する私。
たまに遊びにくる弟やお母さん。
しょっちゅう泊まりにくる亜季。
いつの間にか、私は25歳になってた。
東京にきて2度目の夏を迎えようとしていた。
「桜庭さん、金曜日の納涼会に出る?」
声をかけてきたのは、循環器科の心臓血管外科医のホープ高杉先生。
関西地方の有名な医学部を卒業後、シカゴの大学に留学し腕を磨いて帰ってきたらしい。
32歳にして、何件もの難しい手術を成功させ少ない人員の循環器科を引っ張っている。
「納涼会って、まだ真夏でもないのに行われるんですね。」
和気あいあいのアットホームなこの病院は、何々会ってのが多く開催される病院。
ただたんに、飲み会がお好きなだけだろうが、大学病院にはない穏やかさだ。