あなたを忘れていいですか?
「ちょうどその日は夜勤じゃないので出ようかな?
去年は夜勤だったので出れませんでしたけど。」
納涼会や忘年会に夜勤が入って参加できない看護師や医師には、院長から特別手当てがもらえる。
だから夜勤にあたってしまっても、特に揉め事もないのがすごい。
「よし、桜庭さんは参加ね。
そうそう、今日の午後に新患さんが入院してくるから。
病棟師長から話聞いた?」
「あ、なんとなく。
だって私、夜勤明けたらまた夜勤ですから。」
梅雨明けのじめじめした夜風が開けた窓から入って、高杉先生の柔らかい髪の毛を靡かせている。
「そっか、俺は当直じゃないからお話できないね。」
「でも先生の担当でしたら、先生はそのまま病院にいるんですよね。
いつ寝るんですか?」
「ん~適当~」
適当って、仕事以外のことには本当に適当な人だ。