あなたを忘れていいですか?

卒業式、私は咲哉に話しかけた。

でも咲哉は、言ったんだ。

「頑張れよ…」

と、一言。

これから私達はどうなるのか、付き合っていけるのか、決定的な言葉もないまま離れてしまった。

せめて、別れの言葉ぐらい欲しかったといっぱい泣いた。

言われなくても頑張るよ。
いい女になって、絶対に後悔させてやる。
そう心に決めて頑張った。

看護大学を卒業して、大学付属の病院に勤務した半年後、また再会してしまった。
梅雨明けのじめじめした日だった。

医療機器メーカーの営業としてやって来た咲哉は、大人っぽくなっていた。

職場の同期や先輩を混ぜての飲み会。

二次会の帰りに、咲哉は言った。

「ずっと忘れられなかった…」

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