あなたを忘れていいですか?

その言葉がどんなに嬉しかったか、咲哉は知らないよね。
零れ落ちそうになった涙を我慢しながら、私は言った。

「私だって、忘れたことなかったよ。」

お互い離れるのはもう嫌だと言葉には出さなかったけど、抱き合った温もりで解り合えた、はずだった。

二人でご飯を食べて抱き合って、いつの間にかずっと一緒にいた。

1LDKの私のアパートで同棲を始めたのは、付き合い始めて三ヶ月経った頃。
どちらが言い出したことではなく自然と咲哉の帰りを待つ私、私の帰りを待つ咲哉。

夜勤が続いて私がいない夜も、咲哉はちゃんと家に帰ってきてくれてた。
休みが重なった時は、二人でいろんな所に行った。
二人で食べる食事も、二人で寝るベッドも、とても幸せだった。

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