先生が私に恋をした
「なんかあった?」
「いえ、特には」
「ないのに、わざわざこの公園に?」

ズイッと先生の顔が近くなる
ツンツンとワックスでたててる髪が汗に濡れて
キラキラと艶めいて見えた

「聞いてる?」
「あ、はい」

視線を髪から先生の顔に戻す

「元彼に呼び出されて、、、返したいものがあるって。」
「それだけ?」
「いえ、返したいものはなくて、代わりにもう一度
やり直したいって言われたんです」

先生はほんの、本当にほんの一瞬だけ言葉に詰まった

「でも、無理だって断ったんです。それだけです」

先生は私の手を繋ぐとそのまま歩き出した
沈黙が続いて、気が付くとひとつの建物の前にいた

「先生?」
「冷たいコーヒー入れてあげるから飲んで行きな」
「でも、、、先生ジョギングの途中なのに、、、」
「もう、終わる予定だったから大丈夫」
「じゃあ、少しだけ」

エレベーターで上がること五階
突き当たりが先生の部屋だった。
初めて入る先生のプライベートな空間、緊張が伝わらないように先生から離れる

先生は特に気にも止めず、どうぞと玄関を開けた

「お、お邪魔します。」

中はモノトーンで統一されたシックな家具や壁紙、
キッチンも白で清潔感もあった
高級そうな黒のソファに座るように促され
隅っこに浅く腰かける





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