先生が私に恋をした
あの日からもうすぐ三週間、真治と会うことも連絡をとることもなくなった
結論が出たら連絡すると言われたからだ

その間も日野先生とかっしーからのアプローチは
続いていた
近藤先生は必要以上に入ろうとはしない
それがなんなのかは分からないけど、時々私に送られる
熱い眼差しは先生の気持ちを知るには容易ないことでも
あった


「奏さん、今日の俺の医局、誰が掃除に来るの?」

診察の合間に日程表を見ながらかっしーが聞く

「今日は私です」
「いえーい」

バンザイして、鼻歌を口ずさみカルテに記載するボールペンはリズミカルに見えた

そんなにうれしいのか
分かりやすくて、なんだか可愛い
思わず口元が緩む

「奏さん、ボールペンの替芯ちょーだい」

私はPCから自分の机の引き出しに視線をおとす
替芯を出してかっしーに渡す

「ありがとー」

あからさまに替芯と一緒に私の手を握り
替芯がスルリと私の手から抜ける
仕事中のこうした些細なスキンシップはもう当たり前に
なっていた



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