先生が私に恋をした
「そっか、昨日決断伝えたんだ」

私は日野先生の医局掃除のとき、昨日のことを全部
話した

「はい。グダグダ悩んでた私ともサヨナラしたんです」
「頑張ったんだね」

テーブルを拭いていた私の手からふきんを奪い取ると
そっと抱きしめた
子供をあやすように頭を何度も撫でながら、、、

私は涙が出るのを必死に堪えていた
自分の勝手な言動で真治を傷付けた、その思いが
ジワジワと押し寄せてきたから
先生はそれを知ってるかのように、抱きしめたまま
の体勢を保っていた


どのくらい過ぎたかな、、、
どちらからともなく身体を離し、すがるようなキスを
何度も繰り返した
時間も場所も何もかも忘れるくらい
私は先生とのキスに溺れた

先生は何を考え、どう思っていたんだろう
そのあとは特にこれといった会話もなかった

ただ、、、
掃除が終わって医局を出るときに
一言だけ、私に呟くように投げ掛けた

「待ってるから」

と、、、

追及しなくても、その言葉の意味は私にも分かった
だから私は振り返って先生と視線を絡めて
小さく頷いた



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