リンク・イット・オール
「だから、どんな形でも歌を続けてほしい。……なんて、私のワガママでしかないんですけど」
そうはっきりと言い切った私に、真紘先輩は驚いた顔をする。
まずい、図々しくあれこれ言いすぎたかな。
一瞬不安になるけれど、次の瞬間彼が見せた小さな笑顔にその気持ちも吹き飛んだ。
「悠の言葉は不思議だね。いつも背中を押される」
「そんな、大したこと言ってないです」
「大したことなんだよ。悠がそうやって言ってくれると、こんな俺でも求めてもらえてるんだなって励まされる」
以前も少し思ったけれど、もしかして、いつも平然としている真紘先輩も本当は不安に思う時もあるのかもしれない。
今自分が歌う理由、どうなっていくか見えない未来。
確かな形がないものは、掴めなくて不安定だ。
……だけど不安に思うなら、その度背中を押すから。
力は弱いかもしれない。
そのうち、彼の背中を押す沢山の手のひとつとして紛れるだけの存在かもしれない。
だけど、あなたの力になれるのならそれでもいい。
ずっと、あなたの歌を聴いていたいから。