リンク・イット・オール
すると真紘先輩は、袖を掴む私の手をきゅっと握る。
「……本当は、自分の本心なんて分かりきってるんだ」
この手を握る長い指は、まるで恐れを堪えるかのように力が込められた。
「親に反対されたとしても、周りに笑われたとしても、それでも、歌を続けたい。プロになって、大きな世界で歌いたい」
それは、彼が笑顔の下に隠した夢。
『正しいかどうか決めるのは周りじゃなく自分自身』
先ほど真紘先輩が私にくれた言葉は、彼が彼自身に言い聞かせている言葉なのかもしれないと思った。
「だけどそれを言葉にした時、どんな反応をされるかが怖くて、笹沼たちにすらも言えないでいる」
夢を言葉にするのは、怖い。
笑われるかも、反対されるかもしれない。
だからきっと、『辞める』という選択肢を選んだのだろう。
「……けど悠がそう言ってくれるなら、少しだけ勇気が出そう」
真紘先輩は、その言葉とともに優しく微笑んだ。
……そのひと言が、嬉しい。
ほんの少しでも、あなたの背中を押せたなら。その笑顔が私の自信になる。
あなたの言葉が、この心を強くしてくれる。
その思いをぎゅっと抱きしめるように、彼の長い指を握り返す。