リンク・イット・オール
「どれどれ、話してごらん?莉乃先輩が恋のアドバイスをしてあげよう」
「ってお前も彼氏いたことないだろ」
「うるさいなぁ、彼氏いないからって恋したことがないわけじゃないですぅー!」
ふたりのやりとりの中に出てきた『恋』のひと言に耳が反応して、余計体温が上がり耳まで熱くなる。
「わ、私そろそろ部活行くね!」
こんな真っ赤な顔を見られれば、さらにからかわれかねない。
そんな思いから、私は鞄を手に席を立つと、逃げるように教室をあとにした。
恋、かぁ……。
これまで、真紘先輩にときめくこともあったけれど、それ以上に安心とか安らぎとか、『ありがとう』の気持ちが大きかった。
だけど、あの日つないだ手にしっかりと感じた気持ちは『好き』の気持ちだ。
認識するとまた恥ずかしい……!
熱い頬を冷ますように両手で押さえ、落ち着きを取り戻しながら視聴覚室のドアを開ける。
「お疲れ様です」
ここに来るのも最近は少し慣れて、怯えることなく入ることができるようになってきた。
すると部室の中にいたのは、笹沼先輩と高田先輩、関先輩の3人。
今日は珍しく3人揃って楽器を手にし、楽譜を見ながら話をしているところだった。
彼らの赤い髪も大きなピアスも、もはや見慣れたものだ。