リンク・イット・オール
「あの、真紘先輩の好きなものって……」
そのためにはリサーチだ、と先輩たちに聞こうとした。けれどその時、ドアが開けられ真紘先輩が姿を現した。
白いセーターを着た真紘先輩の姿に、私は慌てて口をつぐむ。
危なかった。真紘先輩のプレゼントの相談を、真紘先輩本人に聞かれるわけには行かないもんね。
「珍しい。ヒロ遅かったじゃん」
「6限目体育でさ。片付けやらされてた」
笹沼先輩に答えながら部室に入る真紘先輩は、「ケホッ」と短い咳をした。
「風邪ですか?」
「たぶん。でも喉の調子悪いだけだから、すぐ治ると思う」
その乾いた咳が気になり声をかけると、彼は笑って答えた。
喉風邪かぁ。高熱とかにつながらなければいいけれど。
そう思ってから、ふと鞄の中にあるのど飴のことを思い出す。
お父さんが今朝出かけに『コンビニのクジの景品でもらったから』とくれたものだ。
鞄を探り、『はちみつのど飴』と書かれた飴をふたつほど手に取る。
「あの、真紘先輩。よかったらこれどうぞ」
そう差し出すと、真紘先輩は手を伸ばしてそれを受け取った。
「ありがと」
飴を手渡す瞬間、かすかに触れた指先。
その体温にドキ、と鳴る心にまた頬が熱くなるのを感じる。
恥ずかしい、けど嬉しい。
この気持ちも、彼だけに感じるもの。