リンク・イット・オール



すると、その中の一枚に目がとまる。

それには手書きで歌詞が書かれており、読んでみると、それはあの日真紘先輩が歌っていた歌の詞だと気付いた。



改めて読んでいくとその歌詞は、悩み迷う中で背中を押してくれるような言葉が並んでいる。

それはきっと、歌うことを続けたいと願う彼の前向きな気持ちと、時には自信をなくす気持ち。

そんな複雑な思いから生まれた優しい言葉だ。



書いてるのは、真紘先輩だって言っていた。

そう思うと、彼の心の内をまたひとつ知ることが出来る気がした。



それを読むうちに、小さな声で思わず口ずさむ。



うろ覚えのメロディは、不安定なところもある。

だけど、彼の思いを私も口にしたいと思った。



そして、たどたどしくも最後の歌詞まで歌い終えた、その時。

ドアの方から突然、パチパチと小さな拍手が聞こえた。



「わ!?」



誰かいた!?

驚き見ると部室の入り口には、拍手をする真紘先輩の姿がある。



「ま、真紘先輩!?」

「いやー、荷物置きにきたらいいもの聞いちゃった」



そう言う彼の足元には、紙袋ふたつにまとめられた荷物がある。

さらに増えたプレゼントをまた置きにきたところらしい。



ひとりで歌っているところを聞かれていたなんて、恥ずかしすぎる……!


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