リンク・イット・オール
「体質的に再発を繰り返すだろう、ってさ。俺覚えてなかったんだけど、子供の頃にもやってたらしくて、今回も再発なんだって」
「え……」
「今の時点でこれだから、もっと喉を使うようになったらもっと悪化する。繰り返すことで、いつか歌えなくなるかもしれない」
プロになれば当然、今以上にもっと喉を使うようになる。
その度治療してもまた、同じように繰り返す。
その場しのぎをして続けても、いつか声が出なくなるかもしれない。
「……歌を本気でやるのはやめたほうがいいって、医者から言われた」
それは、彼の夢を諦めるということ。
下を向いたままの彼が、どんな気持ちでその言葉を言っているのか。それを想像するだけで胸が痛い。
彼の歌は、私にとっての希望。
そうであると同時に、彼自身にとっても生きがいだということもわかる。
でも、諦めてほしくない。
そんなふうに悲しく俯かないでほしい。
その一心で、どうにかして言葉を伝えたいと思った。
「でももしかしたら治ることだってあるかもしれないですし、諦めるのは早いですよ。再発を繰り返しても、休みながら続けていけば……」
そう、自分なりにフォローする言葉を探しながら言いかけた。
「確証もないこと言うなよ!!」
けれど、自分が発した言葉に彼から返ってきたのは、公園中に響くほどの大きな声だった。
いつも笑顔で穏やかで、そんな彼から初めて聞いた怒鳴り声。
ようやくこちらを向いたその表情は、苛立ちに歪んでいる。
突然発せられたその声と向けられた視線に、驚き身をすくめる。そんな私に真紘先輩はすぐハッとして我に返った。