リンク・イット・オール
◇9.とどけたい うた
何度も、たくさんの言葉をくれた。
心を救ってくれた。
そんな彼が悲しい時に、私はなにも言えなかった。
言葉ひとつも届かない、自分が無力で情けなくて、なにも変われていないままだと気づく。
言葉なく公園から帰った、次の日。私は少し迷ったけれど、高田先輩たちにも真紘先輩から聞いた話を伝えた。
風邪ではなかったこと。
喉の病気で、お医者さんにも歌を本気でやらないよう言われたこと。
文化祭も、バンドも歌も、もうできないこと。
しきりに『ごめん』と繰り返していたこと。
話しているうちに泣きそうになってしまったけれど、これだけは先輩たちにきちんと伝えなきゃ、と必死に堪えて伝えた。
高田先輩たちは、その話を聞いて、黙って俯いた。
真紘先輩にとって、歌うことがどれほど大きなものかを私以上に知っている。だからこそ、軽々しく言葉が出てこなかったのだと思う。
それから、週が明けても真紘先輩は学校を休み続けているようだった。
その影響か、部室に先輩たちも集まらなくなり、放課後視聴覚室へ行ってもそこはただただ静かだった。