リンク・イット・オール
「なのに、どうしてサッカー選手にならなかったの?」
「ならなかったというか、なれなかったというか」
私の問いかけに、お父さんは穏やかに笑って、手元のトーストにバターを塗る。
「高校生3年の時試合中の事故で、足がダメになってな。日常生活に支障はないけど酷使はできなくて、諦めた」
「事故……」
「いやー、あの時は荒れたな。それまで俺にはサッカーしかなかったし、大学推薦も消えたし」
サッカーしかなかったお父さんが、その夢を失くした。
その状況は今の真紘先輩の状況に重なって、求める答えが聞けるかもしれないと思えた。
「お父さんは、その時なんて言葉をかけられて嬉しかった?」
「嬉しかった言葉、か……」
なんていえば、どんな言葉だったら、彼に届く?
私の問いかけに、お父さんは悩ましげに少し考えてから、当時を思い出すように口を開いた。
「そうだな。その時の彼女が『どんなあなたでもそばにいる。だからこれからの人生でもっと大切なものを見つけていこう』って外に連れ出してくれてさ。それがすごく嬉しかったな」
「えっ、お父さん高校生の頃から彼女いたの?」
「もちろん。こう見えてもモテモテだったからな」
ふふんと誇らしげに言って、懐かしむように目を細める。