リンク・イット・オール




お父さんとそんな話をしてから、私は家を出た。

学校に行く間も、ついてからも授業中も、今朝のお父さんの話が頭の中でずっとぐるぐると巡っていた。



伝えたい、伝えられたらいい。

だけど、怖い。

お母さんはどうして、その一歩が踏み出せたんだろう。



答えの出ない問いかけばかりが、ひたすら、ぐるぐると。





その日の放課後。

今日こそは誰かが来ているかもしれない、と希望を抱いて部室へ行く。

けれどやはりそこには誰もいなかった。



置かれたままの楽器も、雑誌もお菓子も、変わらない光景のはずなのに、どこか寂しさを感じさせる。



「……失礼、します」



誰に言うわけでもなくつぶやき、部室へ入る。



少し空気がこもっている気がして窓を開けると、入り込んだ風がカーテンをふわりと膨らませた。

それと同時に、大きなスピーカーの上に置かれた楽譜が数枚、部室の中を舞った。


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