リンク・イット・オール
「あっ、楽譜」
慌てて拾い集めると、その楽譜があの歌であることに気づく。
私を、救ってくれた歌。
真紘先輩と再び出会うきっかけをくれた歌。
この曲を彼が口ずさんでいなかったら、私が忘れてしまっていたら。
きっと彼と再び出会うことはできなかった。
気持ちは今も沈んだまま。後悔だけの日々を過ごしていた。
その歌を抱きしめるように、両手でぎゅっと楽譜を抱える。
するとその時、背後のドアが開く音がした。
「あれ、悠。来てたんだ」
振り向くとそこにいたのは高田先輩で、彼は少し驚いた顔で私を見た。
「高田先輩。どうしたんですか?」
「楽器の弦、張り替えようと思って。悠はなんで?」
「えっ、なんで……ですかね」
なんで来たか、と聞かれても、はっきりとした答えが出なくて口ごもってしまう。
「……ま、部員なんだし、部室に来て当たり前か」
そんな私を見て、高田先輩はなにかを察したように言って部室内に鞄を下ろした。
そしてスタンドにかけてあった黒いベースを手に取ると、ペグを回し4本の弦を1本ずつ緩めていく。