リンク・イット・オール
「なんだか、会うの久しぶりですね」
「まぁ、ヒロいないのに練習してもって感じがあってね。俺らのボーカルはヒロだけだから、代わりに誰かに頼むのも違うし」
笹沼先輩たちが来ないのも、同じ理由なのだろう。
一緒にやってきた仲間がひとり欠ける、そのことがみんなの士気を下げてしまったのだと思う。
高田先輩は細長い指で銀色の弦をほどきながら、横目で私が手にする楽譜を見る。
「そういえば、ヒロにその曲が好きだって言ったんだって?」
「えっ、あ……はい」
真紘先輩から聞いたのだろう。あの時、突然泣き出した自分のことを思い出し、恥ずかしくなってしまう。
けれど高田先輩は、小さく笑った。
「ヒロ、超喜んでたよ」
「そんなに、ですか?」
「うん。自分の曲を好きになってもらえるのはやっぱり嬉しいからね」
真紘先輩と同じことを言ってる。
やっぱりそれは、作る人共通の思いなのかな。
「ヒロは人のために歌を始めたから、余計にかも」
人の、ために……?
言葉の続きを待つように彼を見ると、高田先輩はベースから視線をそらすことなく話を続けた。