リンク・イット・オール
「ヒロの家の事情、聞いた?」
「はい、お父さんがいないってことだけ」
「そう。それで子供の頃、ヒロのお母さんも仕事忙しかったから、あいつが妹弟の遊び相手することも多かったらしくて。その時に歌を聞かせたのが、歌を始めたきっかけなんだって」
そういえば幼い頃はお母さんが忙しかったって言ってた。
あまり一緒に過ごせないお母さんの代わりに、双子ちゃんや弟くんのために、歌を聞かせていたんだ。
「自分の歌に楽しそうに笑ってくれたり、時には安心して眠ってくれる姿が嬉しかったって。その時の気持ちを、悠に会って思い出したって言ってたよ」
私に会って……?
思えば、私が彼の歌を好きだと言った時、泣いたり笑ったりした時。そのたび真紘先輩はとても嬉しそうに笑っていた。
なんの力もない私の言葉に、歌を始めた頃の気持ちを思い出してくれていたなんて。
「まぁ、あいつ悠の前ではちょっとかっこつけてるから、悠にはこんな話できないと思うけど」
付き合いが長いからこそわかるのだろう。高田先輩はふっと笑いながら、すべての弦を外し終え手を止める。