リンク・イット・オール
その日から、放課後の部室では軽音楽部の練習が始まった。
……といっても、現状から見て文化祭ライブでやるのは一曲のみ。
その一曲を、私が歌えるようになるための練習だ。
「悠!声は喉じゃなくて腹から出せ!鼻から吸い込んで、口から吐いて、あー!」
「あー!」
「まだまだ小さい!」
「あーー!!」
笹沼先輩の特訓に、私は必死に声を出す。
久しぶりに部室に高田先輩と笹沼先輩、関先輩が揃ったというのに。まず声も出ない私は、基礎の練習ばかりだ。
普段こんな大きな声を出すこともないものだから、歌う前から酸欠になりそう。
意外と、ボーカルって大変……!
カラオケ同様、歌詞を覚えて歌うだけ。そう思う気持ちがなかったわけじゃない。
けれど実際楽器と合わせて歌うと、音程はもちろん歌の入りのタイミングやリズムを合わせるのも大変だし、声量も必要だ。
予想以上に大変だと思い知る。
「よし、少し休憩!」
笹沼先輩の言葉に「ふぅ」とひとつ息を吐き、ペットボトルの水を飲む。
すでに疲れ切っている私を見て、関先輩は笑った。