リンク・イット・オール
「そう。今回は時間もないしそこまでできなくても、それを知った上で歌うのはまた心構えが変わるからな」
笹沼先輩はそう笑って言うと、「そうだ」と思い出したように言葉を続ける。
「それと、ボーカルは一番注目されるからな。本番、大勢の前で固まるなよ」
「うっ!」
考えないようにしていたけれど、人前に出て歌うということは、当然注目されるということ。
今ですらまともに声が出ないのに、ちゃんとできるだろうか。
そのプレッシャーに一気に緊張し、固まってしまう。
そんな私を見て先輩たちはおかしそうに笑った。
うう、不安になってきた……。
「つーかさ、そもそも文化祭にヒロ来んの?」
そんな中、関先輩が口にした疑問に胸はドキリと嫌な音を立てた。
そうだ。今日も休み続けている真紘先輩が、そもそも文化祭当日に来てくれるかがわからない。
彼に聴いてもらうためのライブだ。彼がいなくちゃ意味がないのに。