リンク・イット・オール
「ちゃ、ちゃんとごはん食べてますか……?」
「なにいきなり来て母ちゃんみたいなこと言ってんの」
つい心配になり聞いた私に、真紘先輩は小さく笑う。
けれど、その笑顔にいつものような明るさがないのも確かだ。
この前お見舞いに来た時より元気がないのは明らかなのに、それでも彼は笑顔を作ってみせる。
「この前、ごめんね。ちょっと八つ当たりした」
「いえ、私こそ……真紘先輩の気持ちも考えずに、すみませんでした」
小さく頭を下げた私に、真紘先輩はぽんぽんと頭を撫でる。
こんな時なのに、まず自ら謝ってくれるなんて。
その優しさに、また胸が苦しい。
「……あの、明日なんですけど」
勇気を振り絞り切り出した話題に、真紘先輩はすぐ察したように悲しげに目を伏せた。
「ごめんね、まだちょっと、はしゃぐ元気なくてさ。文化祭も休むよ」
それは、はっきりとした断りの返事。
「けど週明けから学校はまた行くから。そろそろ行かないと、出席日数もまずいし」
これ以上強く誘ったら、嫌がられるかもしれない。
うるさい、なにも知らないくせにと、跳ね除けられるかもしれない。
だけどこのまま帰っても、なにも変わらない。
聴いてほしい音も、伝えたいことも、届かない。
そのほうがいやだ。
心の中で強く思ったと同時に、私は真紘先輩の服の裾をぎゅっと握る。