リンク・イット・オール



「それにしても、ライブなのに衣装も用意できなかったのは味気ないよなぁ」

「まぁ、時間もなかったし。それに制服でライブできるのも今だけだしいいんじゃない」



そんな会話を交わす笹沼先輩と高田先輩に、ふと思い出すのは以前真紘先輩が話していたこと。



「あの……真紘先輩が前に言ってたんですけど、高校卒業したらバンド解散しちゃうって本当ですか?」



叶わないかもしれない夢を口に出すことを恐れた、そんな彼の、初めて見た弱さを思い出す。

その問いに、先輩たちは「あー……」と思い出したように頷いた。



「そういう話もあったな。まぁ、俺は納得してないけど」



笹沼先輩は、そう不満げに言う。



「俺は自分の曲をもっとヒロに歌ってほしいし、一緒に音楽やっていきたい。……正直に言うのはなんか照れるから言えてないけど、出来るなら一緒にプロ目指したいって、思ってる」



プロを目指す。

それは、真紘先輩も掲げていた夢。

互いに言葉に出せていないだけで、同じ夢がそれぞれの胸にはあったんだ。


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