リンク・イット・オール
「どうだろ、見てないけど」
「やっぱり来ないかな。ヒロ意外と頑固だし」
高田先輩と関先輩の声を聞きながら、辺りを軽く見回すけれど、真紘先輩らしき姿はやはり見えない。
やっぱり、来てない……。
私の言葉じゃ、なにも変わらなかった。
直接届けることすら叶わない。
その現実に、覚悟していたこととはいえ落ち込んでしまう。
そんな私に、笹沼先輩はそっと肩を叩いた。
「ヒロが来なくても、俺らは俺らの、今できる演奏をするだけだ。気合い入れろよ」
その言葉に顔を上げると、先輩たちは3人とも私を見て頷いていた。
……そう、だ。
今の私にできることは、諦めることじゃない。
伝えること。
届かなくても、それでも。
「……はい」
力強く頷くと、先輩たちは笑顔でステージ裏へと向かって歩き出した。
それに続くように、私もその方向へ歩いていく。