リンク・イット・オール
「一学期の終わりに母を亡くして……絶望的で、消えてしまいたかった。その時に声をかけてくれた人が、その人で」
夏の太陽の下、うずくまる私に、あなただけが足を止め手を差し伸べてくれた。
「彼の顔は見えなかったけど、その人が口ずさんでいた歌だけはずっと忘れられなくて。その歌だけを頼りに、彼とまた出会うことができました」
あなたの背中で聴いた、優しい歌。
ささやくような、子守唄のような、穏やかな歌声が忘れられなかった。
「会ったらありがとうって言いたかったのに、私はなにも言えなくて……だけどそんな私にも、彼は優しくて温かかった」
震える声で言葉を続ける。
いつの間にか、体育館内のざわめきは消えていて、全ての人の動きが止まり話に耳を傾けてくれているのがわかった。
「彼からはいろんな気持ちをもらったのに、夢を諦めようとする彼に私はなにも言えなかった。拒まれたくなくて、嫌われたくなくて、言えなかった」
あなたは、いつも私の心に寄り添ってくれていたのに。
なにも返せない、臆病な自分が情けなくて悲しくなる。
だけど、だからこそ。