リンク・イット・オール
「ってわけでよく聴け!これが、お前を好きな俺らの歌だ!」
笹沼先輩はそう言うと、私の方へ視線を向ける。
その眼差しに私は頷くと、息をひとつ吸い込みささやく。
「聴いてください。……『リンク・イット・オール』」
口にしたのは、あの日真紘先輩が口ずさんでいた歌の名前。
それを合図に、関先輩がシャンシャンシャンシャン、とシンバルでゆっくりとカウントを刻む。
そしていっせいにギターとベースが入り奏でる音は、厚みのある、けれど優しいメロディの曲。
それに合わせて私も、歌い始める。
歌の入りから、息継ぎ、サビまで。何度も何度も練習した。
なのに、こうして人前に出ると全然練習通りにはいかない。声が震えて、裏返る。
ましてや涙声だ、いつも以上に声が詰まる。
だけど、それでもやめることはしない。
真紘先輩が心を込めて書いた歌詞、ひとつひとつを丁寧に歌い上げたいから。
歌ううちに、観客席からは合わせて手拍子が聞こえ出す。
その音に、会場に受け入れられた気がして少し安心すると、自然と大きな声が出た。
ねぇ、真紘先輩。
聞こえてますか、届いてますか?
わたしの声、笹沼先輩たちの音。
私が初めてこの歌を聞いたときのように
あなたの心にほんの少しでも光が射したらいい。
そう願いを込めて
今私は、精いっぱい歌うよ。