リンク・イット・オール
それは昨日、私が彼を見つけたときのことだろう。
小さな歌声、だけど見つけられないわけがない。
ずっとずっと探していたのだから。
だけどそれを今言うことはできなくて、でも嬉しそうに言ってくれる彼に照れてしまう。
「マネージャーの仕事で一番やってほしいのは、掃除より雑用より、俺らの音を一番近くで聞いてくれること」
「音、を……?」
「そう。それでもって、近くにいるからこそ言える意見を率直に伝えてほしい」
彼らの音を聞いて、どう感じるかを伝える。
そのために、真紘先輩は私を選んでくれたの?
「これまでマネージャーに志願してきた人は、ほとんどが音楽なんてどうでもよくて、俺たちの表面しか見てないような人ばっかだった」
彼らの表面……それはきっと、見た目だったり、『バンドマン』の肩書きだったり、だろうか。
確かに、本気で音楽がやりたい人にとって、そこばかりを見られるのは不快かもしれない。
「だけど、俺は純粋に音を聞いてくれる人と音楽がやりたい。それは俺だけじゃなく、メンバー全員の譲れないものだよ」
その言葉に後ろに立つ先輩たちを見ると、楽器を置いた3人も笑顔で頷いた。