リンク・イット・オール
「誰かに好きって言ってもらえて、初めて俺自身や歌に意味が生まれる気がするから」
「え……?」
真紘先輩や歌に、初めて意味が生まれる……?
その言葉の意味がよくわからず顔を拭っていると、真紘先輩は言葉を続ける。
「俺は歌うことは好きだけど、所詮素人だからさ。誰も求めてないし、自分がやめようと思えば止めてくれる人なんて誰もいない」
彼が一瞬見せた寂しい目に「そんな、」と声を挟む。
けれど真紘先輩はすぐにふっと笑ってみせ、私の頭をよしよしと撫でた。
「けど、悠がそうやって泣いたり、笑ったり興奮したり、そういうのを見る度、歌っていていいんだって自信をもらえるし背中を押して貰えるんだ」
私、が……?
「だから、ありがと」
ありがと、だなんて。
私はただ、いつも思ったことを口にしてしまっているだけで、むしろ背中を押してもらっているのは私なのに。
そんな私には、もったいないくらいの言葉。
だけど、私から真紘先輩に与えられている気持ちがあったんだ、と。そう思うと、嬉しいよ。
そう思うとまた涙が出てしまい、真紘先輩は困ったように笑いながら、両手で顔を包んで親指で涙を拭った。