リンク・イット・オール
◆4.ちかい せなか
私のお母さんは、明るく元気で少し気の強い人だった。
お父さんが私に甘い分、お母さんは厳しく言うことも多く、私もお母さんには年相応に反論したりすることも時にはあった。
だけど普段は仲も良くて、笑っていることの多かった家族だった。
この家から笑い声が消えたのは、6月半ばの金曜日のことだった。
雨が降ったその日の朝、私は委員会の仕事でいつもより早く出なくてはいけなかった。
けれどすっかり寝坊してしまい、慌ただしく身支度をした。
どうして起こしてくれないの、なんて八つ当たりをした。
そんな私に、お母さんは『朝は自分で起きる約束でしょ!』と怒り、そこから軽く口喧嘩になった。
そして私は『もういい』と用意された朝ごはんにも手をつけず、いってきますのひと言も言わずに家を出た。
もう二度と、お母さんに『いってきます』が言えないなんて考えもせずに。