リンク・イット・オール



莉乃ちゃんと松永くんとともに、新校舎にある図書室へ向かい、昼休みの賑わう廊下を歩いていく。

その途中、下駄箱前を歩いているときだった。



「あれ、悠じゃん」



そう声をかけてきたのは、相変わらずのパーカー姿で赤髪が目立つ笹沼先輩だ。



「笹沼先輩、こんにちは」

「おーいヒロ、悠いるぞー!」



笹沼先輩は挨拶もそこそこに、一緒にいるのだろう真紘先輩を呼ぶ。



「そんなでかい声出さなくても聞こえるって」



すると、外から他の2年生とともに真紘先輩が顔を見せた。

体調不良に気づかれたくなくて、顔を見られたくなかった。

けど、顔を合わせるとやっぱり嬉しくて安心する。

そう思った途端に、全身からどっと力が抜けた。



「あれ、悠?顔色悪くない?」

「いえ、全く……」



不思議そうに顔を覗き込む真紘先輩に答えようとする、けれど声を出すほどの力も入らない。


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