リンク・イット・オール
まずい、クラクラする。
視界がまわって、気持ち悪い。足から力が抜ける。
ここまで頑張ったのに。
大丈夫、ってさっきと同じように笑えればいいのに。
……もう、だめ。
ガクッと膝から倒れこむと体を思い切り床にぶつけた。けど今は感覚が鈍く、ぶつけた痛みすら感じない。
「悠!?」
真紘先輩の声が聞こえる。
ざわめく周囲の人の声の中、莉乃ちゃんと松永くんの声も、遠く響く。
ごめんなさい、迷惑かけて。
真紘先輩も、いきなり倒れて驚かせちゃったかもしれない。
ごめんなさい、ごめんなさい。
遠くなる意識の中で夢に見るのは、幼い頃お父さんお母さんと過ごした楽しかった日々のこと。
3人で笑って、手を繋いだ幸せな時間。
楽しい、楽しかった。
そう感じてふと気付く。その時間はもう、二度と戻ることはないのだと。
お母さんが倒れた日の夢を見るより、幸せな日の夢を見るほうがつらい。
いっそう深い悲しみだけが、心に残るから。