リンク・イット・オール



「落ちないようにしっかりつかまって」

「えっ、あっはい!」



前に座った真紘先輩に声をかけられて、荷台を握る手に力を込める。

真紘先輩はそれを横目で見ると、私の手を取り、自分の腹部に回させた。



「えっ、あのっ」

「こっちのほうが危なくないから」



そう笑って、ゆっくりと自転車を漕ぎ始めた。

こっちのほうがって……いいのかな。こんなに、くっつくような形になっちゃって。

戸惑うけれど、彼の背中に耳を当てるようにしがみつく。



「こら、池園!ふたり乗りは校則違反だぞー!」

「はーいすみませーん」



遠くから大声で叫ぶ先生に、真紘先輩は振り向くことすらせずに軽く流して走っていく。



歩き慣れた学校近くの道も、自転車で抜けていくとまた新鮮だ。

向かい風に、真紘先輩の金色の髪がなびく。

時折ほのかに彼の香水の香りがして、その度胸がまたときめく。



……こんなに近づいたら、心臓の音が聞こえてしまいそう。

早くなる鼓動に、気づかれてしまいそうだ。



それから、私の家の方向とは逆にひと駅分ほどの距離をこいで、真紘先輩は一軒家の前で自転車を止めた。

門のところにある『池園』という表札に、ここが彼の家なのだと察する。



ゆっくりと自転車から降りると真紘先輩も降り、敷地内のガレージに自転車を停めた。

そして門から入り、庭を抜け、自宅のドアを開けた。


< 75 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop