リンク・イット・オール
「落ちないようにしっかりつかまって」
「えっ、あっはい!」
前に座った真紘先輩に声をかけられて、荷台を握る手に力を込める。
真紘先輩はそれを横目で見ると、私の手を取り、自分の腹部に回させた。
「えっ、あのっ」
「こっちのほうが危なくないから」
そう笑って、ゆっくりと自転車を漕ぎ始めた。
こっちのほうがって……いいのかな。こんなに、くっつくような形になっちゃって。
戸惑うけれど、彼の背中に耳を当てるようにしがみつく。
「こら、池園!ふたり乗りは校則違反だぞー!」
「はーいすみませーん」
遠くから大声で叫ぶ先生に、真紘先輩は振り向くことすらせずに軽く流して走っていく。
歩き慣れた学校近くの道も、自転車で抜けていくとまた新鮮だ。
向かい風に、真紘先輩の金色の髪がなびく。
時折ほのかに彼の香水の香りがして、その度胸がまたときめく。
……こんなに近づいたら、心臓の音が聞こえてしまいそう。
早くなる鼓動に、気づかれてしまいそうだ。
それから、私の家の方向とは逆にひと駅分ほどの距離をこいで、真紘先輩は一軒家の前で自転車を止めた。
門のところにある『池園』という表札に、ここが彼の家なのだと察する。
ゆっくりと自転車から降りると真紘先輩も降り、敷地内のガレージに自転車を停めた。
そして門から入り、庭を抜け、自宅のドアを開けた。